バイオミミクリー

人類は大昔前から自然を模倣し、身の回りの動植物から問題の解決策を手に入れ、自然のシステムと密接に結びついていました。バイオミメティクスは、1950年にアメリカの神経生理学者オットー・シュミットと言う人が初めて使った言葉だといわれていて、生物の構造や機能、生産プロセスなどから着想を得て新しい技術の開発や物作りに活かす科学技術という意味です。バイオミミクリーは、ギリシャ語で「生命」を意味するbios(ビオス)と「模倣」を意味するmimesis(ミメーシス)を組み合わせた用語は1997年にジャニアン・ベニュスが考案しました。この二つの言葉は同じように感じますが、バイオミミクリーは、新たな視点、長いスパンで自然と関わっていくという概念が含まれています。環境問題の解決と生態系の保全です。今が良ければという短いスパンで自然の恵みを搾取した産業革命は、豊富なエネルギーを廉価で手に入れ、燃料を掘り出し燃やしました。その結果、大気や水が汚染され、土地は痩せ細り、副作用が目立ち始めました。

自然は、生態系を損なわないで、最小限の材料とエネルギーで成り立つ世界です。自然の中で目にする90パーセントは未知のものです。人間本来のアイディアを生み出すという資質を生かすには、その源泉である自然を守り、そのつながりの生態系を学ぶ必要があります。自然を大切にすることが、次の時代をひらく力のひとつになります。

自然から受け取った知恵をわかりやすいカードにすることで、遊びながら自然への親しみを感じ、自然の奥深さに気づくことは、これからを生きる子どもたちや若い方が未来を考える力になります。

2023年7月28日、社会福祉協議会のボランティアで皆さんにカードを作ってもらいました。神経衰弱ゲームで遊びながら自然理解を深め、新しい発見につながることを願っています。

・強力なあごで植物をかみきるカミキリムシ→木をすばやく効率的に切るチェーンソー

・光でコミュニケーションするホタル→熱を発生せずに科学の力で光を作るケミカルライト

・くらす環境で飛び方が違うチョウ→なめらかな風が出る扇風機

・正六角形ハニカム構造の蜂の巣→強度が必要なサッカーのゴールネット

・いつも清潔な殻のカタツムリ→汚れが落ちるタイル

・服やペットの毛にオナモミの実→何度もくっつけたり剥がしたりできる面ファスナー

・水をはじくハスの葉→ヨーグルトがつかない容器の蓋

・水をはじく稲の葉→雨水が弾かれて滑り落ちていくレインウェア

・人間に気づかれない針を持つ→ 痛みが抑えられる注射・採血針

・高速で水に飛び込むカワセミ→空気抵抗を減らし少ない電力で走る新幹線500系

・大きなくちばしを持つカモノハシ→空気抵抗や騒音、振動を抑えた新幹線700系

・高い飛行力を持つアマツバメ→回転速度をはやめたドライヤーのファン

・栄養をとりみむためにたくさんの穴が必要なカイメン→たくさんの穴が空いているスポンジ

・音もなく飛ぶ森の忍者フクロウ→騒音を減らすためのパンタグラフ

・どんなところでも歩けるヤモリの足→接着剤を使わずにくっつく粘着テープ

・スピードを出すために尾びれを使うイルカ→きりもみ洗いができる洗濯機

・ハンマーでも割れないアワビの殻→軽くて丈夫な宇宙船の外壁

参考文献:「生物に学ぶ技術の図鑑」成美堂出版


参考:
「自然と生体に学ぶバイオミミクリー」Janine M.Benyus著 オーム社 2006年
「自然をまねる、世界が変わる」バイオミミクリーが起こすイノベーション ジェイ・ハーマン著 (株)化学同人2014年
「理系という生き方」最相葉月著 ポプラ新書 2018年
「生きもののふしぎ」上田恵介監修 講談社 2014年

メモ:
テレビ番組「未来への提言 サイエンスライター ジャニアン・ベニス 自然に学ぶ驚異のテクノロジー」2010年



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