伝えることの難しさ

さいたま市綠区で自然保護活動を行っている。ニホンアカガエルを保護しているが急激な減少の一因がアライグマではないかと推測し、2018年4月からさいたま市で捕獲用のカゴを借りている。アライグマは2005年特定外来種に指定され、輸入や飼育等は規制され防除対象になった。アニメのラスカルは可愛い。

あらいぐまラスカルのキャラクター

2020年4月27日、アライグマ2頭が捕獲されたとメンバーからのメールが入った。結構指が器用でおまけに鋭い爪を持っている。アニメの可愛い手とは大違いである。

アライグマの爪は鋭い
アライグマの顔は可愛い

可愛いアニメで子ども達の興味を誘って、実際の動物行動を視野に入れていないと作品だとずっと思っていたが、調べてみると野生動物を飼うことの難しさを伝える作品であった。20世紀初頭のアメリカの様子を伝える原作「はるかなるわがラスカル」。著者のスターリング・ノースが実際体験した一年間の出来事で、人間社会で野生動物を飼うことの難しさを伝えている。アライグマは大きくなると手に負えない生きものになり、カヌーに乗せ湖の向こう側に放すという内容である。作品の真意を知らずにアライグマを飼ったヒトが飼いきれず野に放ち、埼玉県では捕獲数が2015年3484頭、2016年5244頭と増え続けている。春に3〜4頭の子を産み、寿命は14年くらい、日本には天敵がいないこともあり増加傾向である。この捕獲用のカゴで、捕まるのは雄が多い。このアライグマは市の方が引き取りにきてくださり、天に召される予定である。

2020年6月14日の東洋経済のネット記事をみた。外来生物は英語で「エイリアンスペシーズ」と呼ばれ、人間により生息地域から移動させられた生物を指すとのことである。アライグマは、現在は全ての都道府県で見られるという。アライグマが運ぶマダニが媒介するSFTSという新興感染症ウィルスの危険性がある。このウィルスはマダニの体内に生息し、人間には重症熱性血小板減少症候群という病気をもたらす。2013年には国内で初めて感染が確認され、以降、毎年60〜90人の患者の報告がされている。

遠い原産地から連れてこられた生き物をペットとして、飼うことは大きな問題を引き起こす。病気だけでなく、生態系の攪乱や農作物の被害などである。輸入して金を儲けるという発想は無くして欲しいと思う。天敵のいない場所では、増加の道を辿ることになる。

元法務大臣の河井克行さんのブログのタイトルは、「あらいぐまのつぶやき」である。逮捕の報道がなされ、複雑な思いになった。

世の中を動かす人は、お金だけでの判断ではなく、自然という大きな器を考えて判断して欲しいと思う。新型コロナ後の世界は自然から略奪するだけの社会ではない世界が構築されることを願っている。(記 加倉井範子 2020.6.19)

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