素人の出番

NPO法人エコ.エコを立ち上げたのは2012年12月で、その翌年に第1回のコウモリの観察会は、コウモリの著作もある専門家の大沢夕志さんにお願いした。観察会は基本専門の講師に自然を案内して頂き、時々メンバーが専門分野を活かした観察やクラフトなどを実施してきた。観察会は、2020年2月で78回を数えた。新型コロナ感染予防を考えると一人の専門の講師を囲んでの観察会は、難しいと考え、現在観察会を中止している。少人数での案内をするために、今後に備えたいと考えている。

我が家には何年もお蔵入りしたおもちゃの聴診器がある。かつて木の中を通る水の音を聞く事が出来ると雑誌に書いてあり、購入した物である。調べてみると「グリーンエイジNo.4172008年9月号」に下記のように書かれている。

キーワード樹液,仮道管,道管,木部,師部,エンボリズム,萎凋病

樹 木の木部(材の部分)を揚がる水を「木部樹液」と呼びます。これは根から吸い上げられて梢に運ばれる水のことで,内樹皮(師部)にある師管や師細胞の中を 上から下に動く液—「師管液」(同化物質,糖類)—とは異なります。樹木の幹に耳あるいは聴診器をあてると「樹液の流れる音が聞こえる」という話 がありますが,科学的にはこれは正しくありません。聴診器で聞こえる音,つまり人間の耳がとらえることのできる音には,葉が風に揺られてぶつかる音,枝の揺れによるきし みなどの多くの音が混ざっています。幹に耳をあてると音が聞こえるので,何となく「水が流れる音」と言い出したのではないかと思います。

http://www2.kobe-u.ac.jp/%7Ekurodak/structure&sap_files/structure&sap.html

岡山県のホームページには、樹木が水を吸い上げる速さは、葉がよく茂った夏のよく晴れた日の午前中が最も速いのですが、それでも1時間に数10センチくらいゆっくりです。少しでも曇っていると数センチしか移動しません。そのうえ水は0.1ミリよりも細い管を通っているのですから、聴診器では水の流れる音は聞こえません。
聞こえているのは枝が風でしなったり幹が揺れたりする音です。
しかし、実際に聴診器を当ててみると、「サー…」と木が歌う自然の子守歌みたいで、気持ちいいですよ。

https://www.pref.okayama.jp/page/419824.html

つい最近、樹液を吸い上げている音を聞いた子ども達は感動すると言う話を聞いた。観察会には感動は必要である。どうすれば良い観察会ができるか思案していたとき、いつも的確なアドバイスを下さる尊敬する方に相談してみた。一言「音は聞こえるんだよね。」といいその話題は、深く話すことなく別れた。帰ってから聞こえるということに思いを巡らせた。

日本蜘蛛学会の新井さんに動画を撮るために私たちの活動場所に来て頂いた。その時、アリグモを観察した。アリグモはハエトリグモ科でとても眼がよい。クモの脚は、8本だがアリグモは頭胸部の前2本は触角のように動かす。昆虫は頭部胸部腹部に分かれるがクモは頭胸部と腹部に分かれる。アリグモは昆虫のようにくびれがある。ぱっとみてアリとしか思えない生きものである。普通のハエトリグモはジャンプして獲物を捕らえるが、アリグモはジャンプできないと最近のネットに載っていた。昔はジャンプできたのかと考えると進化途中のように感じ楽しくなった。

アリグモ 2020.10.31 お尻から糸を出しているのが見える。

生きものと植物の共進化を考えてみても私たちは進化の途中を生きているのである。私たちが知っていることは一部でしかなく、DNAで調べ分類すると今までの分け方では違ってきた物も多くある。また、考古学でも新しい発見が見つかれば、歴史は塗り替えられる。共に学ぶ姿勢を忘れず、しまい込んだ聴診器を使って音を楽しむ素人が講師の観察会を実施し、感動と不思議と驚きを伝えてみたい。いつか真の学びにつながることを願って。
(2020.11.22 加倉井範子)

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